娘が幼稚園の年中の時、主人が岡山に出張したことがありました。岡山といえば桃太郎だ!きびだんごだ!ということで、主人の留守中は桃太郎の話をして聞かせたり、ぬいぐるみたち総動員で「桃太郎ごっこ」をしたり、そんな「桃太郎週間」のフィナーレを飾ったのが、手作りの「桃太郎仕掛け絵本」でした。
- 製作費用:110円
- 所要時間:2〜3日
製作費用110円は、絵本の台紙に使ったダイソーの紐とじスクラップブックです。綴じ紐を取り去って紐を通す穴の部分は切り取り、単なる黒画用紙として使ったのですが、紙質がしっかりしていて絵本作りに最適でした。また台紙を黒くしたことで、白い紙で作るよりぐっと面白い雰囲気になった気がします。
以下では実際に作った絵本を1ページずつご紹介しながら、仕掛けの説明をしたいと思います。
基本のポップアップ
「むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました」。ここはただのポップアップです。絵本中央に二つ折りにした黒画用紙を台座として貼り付け、そこに子どもの描いた絵を貼るだけなので簡単です。注意点としては、絵本を閉じた時に仕掛けがはみ出さないように気をつけることくらいでしょうか。
どんぶら流れる桃の仕掛け
言わずと知れた桃太郎の名シーン「どんぶらこっこ」です。ここでは、桃を手で動かして川を下らせるような仕組みを作りました。まず桃のたどるルートを下書きして、カッターで細い溝状に切り抜きます。次に帯状に切った厚紙を溝に通し、裏側で適当に折りたたんで溝を抜けないようにしてから反対の端を表に出します。この帯の両端を厚紙で作った桃と貼り合わせれば、溝に沿って桃を動かすことができます。最後に、ページをめくった時に裏の仕掛けが見えてしまわないように、裏側に黒画用紙を貼りつけて二重にします。
この仕掛けは子どもに大好評で、何度も何度も桃の川下りをさせているうちに、一度帯の部分が破れて壊れました。柔らかい色画用紙を使ったので、強度が足りなかったのです。固いボール紙で作り直してからは、壊れなくなりました。愛用に耐える強度、大切です。
ところで、このページの挿絵は娘に「おばあさんが洗濯物干してるところ描いて」と言って描かせたのですが、傑作ではないでしょうか。日本昔話のおばあさんが、セーターやワンピースを干してます。こういう味は、大人だけで作っては到底出せないもので、作品を本当に面白くしてくれます。
桃が割れて桃太郎が出てくる仕掛け
次のページでは、桃が左右に開いて桃太郎が飛び出す仕掛けを作りました。使ったのは、細いPU製のヘアゴムです。半切りの桃ふたつとポップアップの台座部分に小さな穴を開け、ゴムを通して後ろでしばっただけです。
桃を押し開けると同時に赤ちゃんが上に押し出される・・という仕組みも頑張ればできたかもしれませんが、あまり頑張らずに赤ちゃんは手動で摘出するスタイルにしました。つまり台座に開けた切り込みに差し込んであるだけです。このページも子どもに大好評でした。
障子を開け閉めする仕掛け
次は桃太郎の出発準備に1ページ割きました。「おばあさんがきびだんご作ってるところ描いて」と娘に言ったら、だんご三兄弟のように串に刺さって出てきました。そうだね、おだんごと言えば、スーパーで3串100円で売ってるあれだね・・
このページでは少し笑いをとろうと思って「障子を開けたらおじいさんがきびだんごをつまみ食いしてるってことにしようよ」と娘をけしかけましたが、娘は賛同しませんでした。おばあさんがきびだんごを作っている間、おじいさんは「日本一」の旗を作っていたはずだと言うのです。自分より娘の方が真面目なので「そ、そうだね。おじいさんも桃太郎の出発準備を手伝っていたはずだね」と娘に委ねましたが、出来上がった絵を見ると、旗を作っているおじいさんの横に何か置いてあります。「これは何?」と聞いたら「ビールとおつまみ」と言うので大笑いしました。呑んべえのおじいさん、モデルはパパのようです。
肝心の仕掛けはごくシンプルで、支えの下をくぐらせた厚紙を左右にスライドさせるだけです。注意点は、子どもが開け閉めした時に引っこ抜けてしまわないように、両側に折り目をつけておくことくらいです。
舟が揺れる仕掛け・・は作らなかった
鬼ヶ島へのルートは、陸路、海路、さまざまなイメージがあると思いますが、今回は舟で行くことにしました。仕掛け絵本において、海や川の出てくるシーンは大きな見せ場です。桃が割れる時の仕掛けのようにゴムを使えば、舟をゆらゆら左右に揺らすことができると思いますし、舟ではなくて波の方を動かしても面白いと思います。が、実際にはこのページ、ちょっと手抜きして仕掛けは作りませんでした。波の部分を二重のポップアップにすることで立体感が出ているし、大人目線では満足のいく出来栄えなのですが、子どもには大いに不評でした。「他のページはどれも指で動かす仕掛けがついてるのに、なんでこのページだけ何も動かないの。お舟が動くようにしてくれればよかったのに」というわけです。オーダーメイドのおもちゃに慣れている姫君は、言うことが贅沢ですな。
鬼を攻撃する仕掛け
次のページは、ポップアップを左右に動かす仕組みです。台座に切り込みを入れて動かす部分を差し込み、持ち手をつけるだけです。娘の描いた犬・猿・きじ、紙面の都合もあってブレーメンの音楽隊のような格好で鬼に突撃しています。
宝の箱を開ける仕掛け
最後のページでは、ポップアップの台座に切り込みを入れて開け閉めできる蓋をつけ、開けると宝が出てくるようにしました。この蓋の部分はちょっと失敗で、立ち上げた時きちんと閉まっているように一応差し込み部分はこしらえたのですが、弱すぎてページを開いた瞬間から常に宝の箱が開いている状態です。まあいいか、とそのままですが、今度作るならもう一工夫したいところです。
娘に「箱の中に好きなお宝を入れていいよ」と言ったら、折り紙でたくさん作りました。ネックレス、ブレスレッド、イヤリング・・なんと桃太郎が鬼ヶ島でゲットしたのはジュエリーボックスだったようです。なんともガーリーで可愛い絵本ができました。ちなみに周りに貼ってあるのは、主人が買ってきた「岡山名物きびだんご」の包み紙です。
総合評価:出来栄えとオススメ度
岡山出張記念の、楽しい仕掛け絵本ができました。自己評価はこんな感じです。
子ども受け:
耐久性 :
見栄え :
子どもは仕掛けが大好き、だからこそ耐久性が求められる作品でした。一応、4歳の子どもがいじっても壊れないだけの強度は持たせられましたが、ゴムで作った仕掛けを遠慮なくグイグイ引っ張ったり、「やっつけろー。テイ!テイ!」なんて言いながらガツガツ持ち手を引っ張ったりされると、やっぱりハラハラします。実際には壊れていませんが、安心して与えっぱなしにはできないという意味で星ひとつ減らしました。これは紙工作である以上致し方ない部分なので、よくいじる仕掛けの部分はなるべく固いボール紙を使うなどして対策するしかないかと思います。
見栄えが星5つなのは、我が子のド下手画をこよなく可愛いと思う親心が入っているので、過大評価かもしれませんが・・・この作品の価値はそこにあるので、それでよいかと思います。人の目から見てどうかより、親の目から見て唯一無二、そういう作品がたくさん作れたら幸せですね。
ちなみに親子で共作するには、幼稚園年中という年頃がベストな時期であったように思います。子どもがそれ以上小さいと、自分でできることが少ないので、どうしても親の手が入りすぎて作品として面白みに欠けます。逆に子どもが大きくなると、一から自分でやりたがるので、それはそれで嬉しい成長の証ですが、作品としての完成度は落ちます。幼稚園年中くらいだと、その時期の子どもならではの独創性と、芸術的とすら言える下手さ加減を活かしつつ、作品としてまとめあげる部分は親ができるので、いっしょに作っていて一番楽しいです。年中のお子さんをお持ちの方、今しか描けないお子さんのヘタ可愛い絵を、仕掛け絵本にして保存しませんか。