娘が幼稚園の年長のときに、ボードゲーム専門店「すごろくや」へ連れて行ったことがあります。そのとき店員さんに「5歳児におススメのゲームはありますか」と質問して勧められたのが、「レシピ」でした。大人も子どもも楽しめるゲームとして大変人気なようですので、ご存知の方も多いかもしれません。
店内で実物のカードを使って説明を受けながら1ゲームさせてもらい、娘はすっかり気に入って「これ欲しい。ねえ買って」となりました。たしかに、買ってもよい価格帯であると思います。衝動買いしても家計に大きくは響かないと思います。けれど私はつい「カードが2種類・・うん、200円で作れるな」と胸算用してしまったもので、例によって「つくったる」と娘に耳打ちし、親切にしてくれた店員さんには誠に申し訳ないながら、何も買わずに店を出たのでした。
さて、事実、このゲームは手作りおもちゃ史上もっとも安価に、もっとも短時間で完成しました。
- 製作費用:330円
- 所要時間:30分〜1時間
普段ならもう少し丁寧に仕上げるところですが、とにかく早くプレイしたい娘に急かされていたので、時間重視でさっさか絵を描き、色塗りも娘に任せ、書き直しも打ち消し線でそのまま残しました。しかしゲームとしては十分に機能し、作成後1年近く経つ今でもトランプをしのぐ頻度で活躍しています。
手作り「レシピ」はとても簡単にできる
「レシピ」に必要なのは、「メニューカード」と「具材カード」の2種類です(本物のセットにはカードを並べるための「キッチンカウンター」が含まれていますが、これはなくても問題なくプレイできます)。これらには、ダイソーのメッセージカードとミニカードを使いました。
「メニューカード」は我が家の場合10枚、それに応じた「具材カード」は60枚用意しました。具材カード用に買ったミニカードはちょうど60枚入りだったのですが、書き損じや具材の変更などで少々足りなくなり、もう1組買い足したため製作費が税込330円になっています。
「レシピ」のあそび方
さて、そもそも「レシピ」のルールですが、まず一人につき6枚ずつ「具材カード」を配り、余った具材カードは中央に一山にして伏せておきます。さらに「メニューカード」を1人1枚配り、そこに書かれている6種類の具材を集めるべく、各自が手持ちの具材カードの中から要らないものを捨てては、中央の山から新しく引くことを繰り返します。そうしていち早く必要な具材を全種そろえ、料理を完成させた人が勝ち、というゲームです。
途中他の人が捨てたカードに自分のほしいものがあったら、「レシピ」と宣言してそのカードを手にいれることができます。その代わり自分の番が回ってきたときは手持ちのカードを捨てるのみで、新しく1枚引くことはできません。このようにして常に手元に6枚の具材カードがあるようにします(子どもは気づくと7、8枚持っていたり3、4枚に減っていたりするので、たびたびカードの枚数を確認する必要があります)。具材が5枚までそろったら「ご飯だよ」と宣言。6枚すべてそろったら「できあがり」と言って、集めた6枚の具材カードを皆に見せます。
最後に見せるときまでは、手持ちの具材カードもメニューカードも、自分以外の人に見せません。つまり、自分以外のプレイヤーがなんの料理を作っているのか分かりません。相手のカードの捨て方、取り方から相手のメニューを推測して、欲しがりそうなカードはなるべく出さない、という戦略を巡らせるところが、このゲームの醍醐味となります。そんな頭の使い方ができない小さな子でも楽しめますし、賢い大人も左脳フル回転で退屈しない、非常にすぐれたカードゲームだと思います。
工夫のしどころは具材の決め方
正規品の「レシピ」には、「和食」「ワールド」「スイーツ」などいくつものバリエーションがあるようで、どれもメニューカード8枚、具材カード48枚で1セットとなっています。手作りするとき、このどれかに準拠してもよかったのですが、我が家ではメニューも具材も完全オリジナルとしました。子どもとメニューを考えるのが楽しいですし、ゲームが面白くなるかどうかは、この具材の決め方にかかっていると言えるからです。ちなみに我が家の「レシピ」のメニュー表は以下の通りです。
オムライス | ご飯、卵、ケチャップ、鶏肉、たまねぎ、パセリ |
カレーライス | カレールー、ご飯、鶏肉、じゃがいも、たまねぎ、にんじん |
ポテトサラダ | じゃがいも、レタス、パセリ、トマト、マカロニ、マヨネーズ |
コロッケ | じゃがいも、ひき肉、たまねぎ、パン粉、ソース、キャベツ |
おこのみやき | 小麦粉、卵、豚肉、キャベツ、ソース、マヨネーズ |
マカロニグラタン | 小麦粉、バター、牛乳、パン粉、チーズ、マカロニ |
ハンバーガー | パン、ひき肉、ケチャップ、チーズ、レタス、トマト |
苺ショートケーキ | 卵、砂糖、バター、小麦粉、生クリーム、苺 |
プリン・ア・ラ・モード | 卵、砂糖、牛乳、生クリーム、さくらんぼ、バナナ |
ミックスジュース | にんじん、トマト、苺、さくらんぼ、バナナ、キャベツ |
ゲームを面白くするコツは、複数のメニューに共通の具材をほどよく使うことです。たとえばカレールーのように、カレーライスでしか使わない具材ですと、そのカードを手にした途端に「あ、カレー作ってるな」とバレてしまいます。そのような「バレ具材」が多すぎると、互いのメニューがすぐ分かってしまって、探り合いの面白みがなくなってしまうのです。かといって、すべてのメニューが似たような具材で作られていると、それはそれでつまらないので、我が家ではカレーライスの「カレールー」、おこのみやきの「豚肉」、ハンバーガーの「パン」が、「取ったらバレるバレ具材」として残されています。ゲーム中にこれを取ると、
「あ、パン取ったからハンバーガーだ!じゃあトマトあげない~」
「フン、もう持ってるもんねー」
などと逆に盛り上がったりします。と同時に、バレ具材がこれ以上増えないように、その他の具材を意識的に使った「カモフラージュメニュー」がいくつか加わり、結果的に本家より2品多い合計10品のメニューとなりました。たとえば「ミックスジュース」は、「苺やさくらんぼを取った途端にデザート系だと分かってしまうのは面白くない」ということから、「フルーツと野菜をどっちも使う料理はないだろうか」と考えて付け足されたメニューです。このように実際プレイしてみて、具材を変えたりメニューを追加したり、好きに試行錯誤できるのが、手作りのよいところですね。
「レシピ」の手作りは知育にも
メニューと具材の試行錯誤は、すべて娘とともに行ないました。最初のうちは、紙に書き出した具材一覧をにらんで考え込んでいる私に「早く作ってよー。早く遊ぼうよー」とばかり言っていた娘も、「豚肉はおこのみやきでしか使わないから、具材カードが1枚しかなくて出てきにくいんだよね。そのうえ青のりもここでだけ登場させてしまうと、おこのみやきが不利すぎると思うんだ」などと悩みどころを説明すると、「ふーん」と考えて「じゃ青のりやめてマヨネーズかけたら」と提案したり、プレイヤーとしてだけではなく、ゲームの作り手として知恵を使うようになりました。
その後も二人で何度もプレイして、「たまごの出番が多すぎるな。コロッケの衣のたまごは割愛して、付け合わせにキャベツを添えようか」とか、「カレーのバレ具材はカレールーだけにしたいから、牛肉やめてチキンカレーにしようか」とか、あたかも本物の料理をしているように額をよせて相談したものです。「トマトやレタスが出てきた途端に、サラダ系だとわかってしまってはつまらない。サラダ以外でトマトやレタスを使うレシピはないだろうか」などの問いに頭を使うのは、食育にもなっていたのではないかと思います。
そして作り手の視点からものを見るというのは、ゲームに強くなる一番の秘訣かと思われます。実際このレシピゲームを作った直後、主人など他の人も交えてプレイすると、私と娘の圧勝でした。なにせ二人で考え抜いて作ったので、どのメニューに何の具材を使うか、完璧に頭に入っていたのです。「え、なんでマカロニグラタン、生クリーム使わないの。牛乳より美味しいじゃん」などとつぶやいているパパには負けません。「美味しさ」より「面白さ」重視でつくったレシピなんですからね。
オリジナルのあそび方もできる
上でご説明した基本のあそび方の他に、我が家で開発したひねりバージョンがあるのでご紹介します。
お好きなメニューでどうぞ版
ひとつは「お好きなメニューでどうぞ版」です。最初に具材カードを6枚ずつ配るのは同じ、ちがうのはメニューカードを1人1枚配るかわりに、真ん中に全カード表を向けて並べておくことです。各人は自分の手にした具材カードを見て、どのメニューを作るのが一番有利か判断し、好きなメニューを勝手に選ぶことができます。どのメニューを選んだか、最後まで言う必要はありません。また途中で気を変えて別のメニューにするのもアリです。これは子どもの知力が試されるというか、向上するあそび方だと感じます。途中でお互いが同じメニューを作ろうとしているのが発覚したり、別メニューに切り替えるつもりで途中まで集めたカードを捨てて直後に後悔したり、波乱に満ちたゲームが楽しめます。
あげた具材は捨てないで版
もうひとつは「あげた具材は捨てないで版」です。これはアメリカの人気料理番組、 “Chopped” や “Guy’s Grocery Games” をイメージして作りました。
このバージョンでは、最初に具材カード6枚と、メニューカード3枚を各人に配ります。そして各人は配られた具材カードの中から1枚選んで、その具材を使うメニューカード1枚とセットで、隣の人にあげます(自分も隣の人からもらいます)。このもらった具材カードは捨てることができません。つまり必ずその具材を使った料理を作らなくてはなりません。ただし、必ずしも一緒にもらったメニューカードの料理を作る必要はなくて、元からもっている2枚のメニューカードのいずれかが使えそうなら、その料理を選んでもよいものとします。各々の作る料理が決まったら、あとはいつも通りにレシピのプレイが始まります。
ここまでくると、子どもというより大人の知力が試されます。最初に具材カード6枚とメニューカード3枚を手にした時点で、何を残し何を隣人に差し出すのが正解か考え、次に自分が「捨てられない具材」を受け取った時点で、どのメニューを作るのが最適か考え、そしてプレイ中は「あの人は私があげたあの具材を使った料理を作っているはずだ」という、自分だけが知っている情報を最大限に生かしてうまく立ち回る、かなりの頭脳戦となります。一番盛り上がるのは、やはり最初にカードを交換し合う場面で、もらったカードを見た瞬間に「あ~終わった・・」「そうきたかー」とわいわいがやがや、各々がおせっかいな隣人の差し入れに勝算を突き崩されます。
基本のあそび方に飽きた時などは、こうした変形版もおすすめです。ただ子どもが小さい間は、あまりあれこれやらない方がよいかもしれません。理解が追いつかないと混乱のもとですし、ルールの改定が可能だとわかるとすぐ自分のオリジナルルールを作ろうとし出すのが子どもです。大人の考えるルールは凡そつじつまが合っていますが、子どもの思いつくルールはハチャメチャで、大抵ゲームとして成立しないので厄介です。ちなみに、娘が今いちばん好きなあそび方は、「ママのつくるメニューは私が選ぶけど、私のメニューはママ見ちゃだめ」です。ひどいですねー。
総合評価:出来栄えとオススメ度
さて、このようなカードゲーム「レシピ」ですが、実際に手作りしたものを自己評価すると、大体こんな具合になります。
子ども受け:
耐久性 :
見栄え :
そもそものゲームが非常にすぐれているので、子供受けは満点です。それが数百円で作れるのですから、コストパフォーマンスについても言うことありません。また、私は素材として100円ショップのカードを使ったわけですが、作成後1年近く経つ今でも、特に折れたり角がとれたりすることなく使えていますので、耐久性にも特に問題がないと言えそうです。ただ、そもそもカードゲームですので、飾ってほれぼれ眺めたくなるような魅力はありません。ただの白画用紙ではなく柄つきのカードを使うことで、多少おしゃれにすることはできますが、しょせん描く絵が肉や野菜なので芸術性は求めにくいです。その点こだわらなければ、子どもといっしょに絵を描いたり、メニューを考えたり、あそび方を変えたりと、楽しみ方無限大ですので、非常におすすめです。