日本のカードゲームの定番、カルタ。いろいろな絵柄のものがあって楽しいですね。我が家では「ぐりとぐらかるた」が大人気です。山脇百合子さんの絵本のキャラクターたちがさりげなく共演している楽しさもさることながら、中川李枝子さんのリズミカルな読み句がまた素晴らしく、まだひらがなが読めない2歳の次女も「らくだく、らくだく、ぷっぷくぷー」(本当は「らくだ、らくらく、らっぱふく」)などと横で口ずさむうちに全句を覚えて、かるたに参加できるほどになりました。
しかしカルタ遊びには難点もあります。経験的には、以下のようなもの。
・何度もやっていると札を覚えてしまってつまらなくなる
・後半は瞬発力だけの勝負になってつまらなくなる
・二人で楽しむのが難しい
・プレイヤー間に能力差があると、全員が楽しむのが難しい
たとえば子どもとふたりきりで、やり慣れた札を使って遊ぶとなると、なかなか盛りあげようがありません。後半はもう、ひとりは黙々読む、もう一人は黙々札を集めるという具合で、散らかしたカルタをただ片付けているのと同じになってしまいます。そこで「もっとちがう遊び方してみようよ」という話になり、いくつか考案したのでご紹介します。どれも面白くて、心からお勧めしたいものばかり。普通のカルタ遊びに行き詰まりを感じたら、是非やってみてください。
スピードが新鮮、カルタ「早読み早取り戦」
まずご紹介するのは、「早読み早取り戦」。これは基本的には普通のカルタ遊びと変わりませんが、ちがいは札が取れても取れなくても先へ進むということ。読み手は思い切り息を吸い込み、せーので息もつかずに40枚余のカルタの読み札を、できるだけの早さで読み上げます。取り手は耳を澄まし頭を切り替えながら、取れる札だけ取ります。最終的に何枚とれたかで勝負。
この遊び方の良いところは、読み手も取り手も飽きる暇がないということです。カルタはどうしても読み手が退屈になりがちですが、全部の読み札を一気に読むとなると、早口言葉の練習のようにやりごたえがあります。取り手の方も、ぼんやりしているとどんどん次の札がくるので、卓球の試合中のように気が抜けません。どちらの役も楽しい上に、スピーディであっという間に終わるので、ひと勝負終わったら読み手と取り手を交替して、もうひと勝負楽しめます。普段は子どものために手加減している大人も、遠慮は無用。このスピードで札を探すのは大人でも難しいので、全力で真剣勝負できます。もちろん小さい子どもは完全に置いていかれるので、ある程度大きくなって、通常のカルタの遊び方に物足りなさを覚え始めたらお勧めしたい遊び方です。
緊迫の二刀流対決、カルタ「両取り戦」
次にご紹介する「両取り戦」は、二人きりで楽しむのが難しいカルタを、むしろ一対一の対戦形にアレンジしたものです。札探し能力に差がある兄弟が、一緒に楽しめる形にも応用できます。
まず絵札は通常どおりに並べ、場の中央付近に札2枚分ほどのスペースを空けておきます。次に読み札を二山に分けて、お互い一山ずつ手元に持ちます(見えないように裏表にしておきます)。そしてせーので、自分の山から読み札を一枚取って、場の真ん中に相手を向けて出します。自分が取るべき札は、相手の出した読み札に対応する絵札。相手が取るべき札は、自分が出した読み札に対応する絵札。自分の札を見つけたら、通常通り手を置いて取ってかまいません。ただしこのとき、相手の札も同時に取れるなら、両手を使って2枚とも取ってよいものとします。「自分の札をたたいてから相手の札をたたく」はダメで、2枚取りたいなら必ず2枚同時にたたきます。

さて、こうなると自分の札を見つけた時点で、2枚目を探す余裕があるかどうか、1枚目を堅実に手に入れた方がよいかどうか、判断する必要があります。相手が「あとは『め』が見つかりさえすれば・・」などとつぶやいていたら、相手も自分の札を見つけ終えて2枚目をねらっているということですから、自分がすでに見つけている『め』の札に急いで手を伸ばした方が正解です。ちなみに一度札を叩いたら、それ以上のアクションは認められませんので、片手取りした場合、もう一枚はほぼ自動的に相手のものになります。片手取りしてよいのは自分の札だけなので、間違って相手の札だけ叩いた場合は「おてつき」扱いとなり、2枚とも相手に持っていかれます。
一対一ならではの駆け引きの面白さがあり、札が減ってきてもただの叩き合いにならない遊び方です。あわよくば2枚目も・・と思っている矢先に相手がぱっと両手を出すと、「あ〜1枚でいいから取っておくんだった〜」と後悔至極。札を探す一方で相手の動きにも敏感になり、どちらかがピクッと動いた次の瞬間、二人が同時に自分の札にサッと手を伸ばす、というフェンシングさながらの試合展開になります。
前提として、読み札を読んでくれる人がいなくても自分で読める、かつ逆さからでも支障なく読める能力が必要ですので、基本は小学生以上が対象ですが、逆に年齢差のある兄弟でカルタ遊びをする時に、この遊び方を応用することもできます。普通に兄弟でカルタをすると、どうしても上の子が全部の札をさらっていき、下の子がどこかで泣き出すのが必然ですが、この遊び方は互いの第一に取るべき札が別々なので、小さい子にもチャンスがあるわけです。「下の子の分の読み札だけ親が読む」とか、「上の子は片手取りなしで両取りだけ」「下の子は片手取りしても両取りあつかい」とか、能力差を埋めるようにうまいことハンディをつければ、上の子が絶えず手加減を要求されたり、せっかく取った札を「ちょっとゆずんなさい」と言われてすねることもなく、二人とも全力で楽しめるでしょう。
大爆笑で大盛り上がり、「ジェスチャーカルタ」
スピードや緊迫感なしで、老若男女楽しめるのが「ジェスチャーカルタ」です。とても簡単で、読み手が読み札を読む代わりに、ジェスチャーを使うのです。取り手はこれを解読して、正しい札を言い当てなくてはなりません。読み手を固定して、一人で全札のジェスチャーを頑張ってもよいですし、持ち回りで毎回ちがう人がジェスチャーしてもよいでしょう。うちも子ども二人とやりましたが、子どものジェスチャーって訳がわからないので、本当に笑えます。
「うーん、ヨガのポーズみたいだな・・あ、わかった。『たいそうしたら、たちまちスマート』。えっ?ちがうの?トンネルみたいだけど、そんな札はないし・・犬のつもり?『ほしがほしいと、ほえる犬』。これでもないの?・・降参だよ。ええ〜?『ふとってふくらむ、ふうふうおもち』??ひょっとして、ふくらんでるおもちを体で表現してた??分かるわけないよ〜」
というわけで、終始笑い転げて全員が息切れしました。これなら、若者の集まりでも受けるでしょうし、家族団欒のひとときにもうってつけです。勝ち負け抜きで盛り上がりたい時に、是非お勧めしたい遊び方です。
ひらがなで道をつくる、頭脳戦「カルタすごろく」
ここまでご紹介した遊び方はすべて、ある読み札に対応する絵札を探すという点で、カルタの基本形から大きく逸脱していませんが、これからご紹介する「カルタすごろく」はもはやカルタではありません。カルタの札をすごろくのマスのようにして、札の上でコマを動かすゲームです(サイコロを振るわけではないので、厳密には「すごろく」でもありませんが)。
まずカルタの札を、4かける11の形に並べます。『あ』〜『わ』の札で構成されているカルタなら、44枚でちょうどのはずです。『を』や『ん』の札が含まれている場合は、その2枚を抜いてください。次にコマを2つ用意して、対角線上に置きます。それぞれの角が、それぞれのコマのスタート地点です。

さて、どのようにコマを動かすかですが、コマは「五十音表のいずれかの行が並んだ道の上」だけを通れます。例えば写真赤枠のように、『あいうえお』の5枚の札が隣り合わせに並んでいたら、コマは『あ』を通って5マス進んで『お』まで行けます。5枚の札の順序は問いませんので、『あいうえお』の代わりに『えうあおい』などと並んでいても構いません。また隣接さえしていれば、写真黄色の『かきくけこ』のように、途中で曲がっても構いません。『やゆよ』は3文字そろえばOKですし、『わ』は1文字だけで進めます。
もちろん最初にランダムに並べた状態のままでは、コマは1歩も進めません。ゲームがはじまったら互いに一手づつ、札と札を好きに入れ替えて道をつくります。自分のコマの前に、5枚(ないしは『やゆよ』の3枚か『わ』の1枚)の札がそろったら、その上を進んで最後の札の上で止まります。最終目的は、相手のスタート地点、つまり自分と反対側の角に行き着くこと。相手より先に行き着いた方が勝ちです。
これはなかなかの頭脳戦です。とにかく直線に札を並べて最短ルートをねらうのもアリですが、使えそうな札が一箇所にかたまっていたら、たとえば自分のコマの近くに『な』と『ぬ』と『の』を見つけたら、少し遠回りでも『に』と『ね』でつないでその道を進んだ方が、二手で五歩進めるわけです。さらに、自分の道づくりにばかり熱中していると、相手がいつのまに道をつくり上げて先にゴールしたりするので、敵が何を意図して札をスワップしているのか、自分の作戦と並行して洞察する必要があります。さらには、互いのスタート地点が互いのゴール地点というのがまた面白さのもとで、「自分のつくった道が相手の侵入経路になり得る」という危機感が必要です。調子よく道を開拓してズンズン進んでいても、後方でその道にシレッと踏み込まれたら一巻の終わり、あとはゴールまで札が並んでいますから、敵は一気に完走できてしまうのです。とにかく慎重に考えないと、大人でもそう簡単に勝てませんし、子どもは知恵をしぼりにしぼって、よい刺激になります。
例として、うちの8歳の長女が何度もママに負けた末に、はじめて勝った時の試合経過をご紹介しましょう。写真右上の角が娘のスタート地点、左下がママのスタート地点です。『うえおいあ』『のなねぬに』とまっすぐ進んだ娘は、ゴールまであと4歩。一方で、ママは『こくかけき』『そすしさせ』とくねくね進み、盤の真ん中近くにとどまっているように見えます。

ですがこの時点で次の一手がママなら、娘は負け。なぜなら『へ』と『わ』をスワップすれば、『わ』を通って娘のつくった『あいおえう』に合流でき、一気にゴールだからです。次の一手が娘だったので、「いいのかな?ママはゴールできちゃうけど、いいのかな?」と警告してやったところ、はっと気づいた娘は『れ』と『わ』をスワップして、『わ』を自分のヒヨコの下に敷きました。これは賢い選択です。コマの下にある札は動かせないので、こうされてしまうとママは『あいおえう』道に合流できないのです。一方で娘は『やゆよ』を一直線に並べればゴールですので、形勢逆転、ママのピンチ。やむなく『やゆよ』を奪って自分の道づくりに使う作戦に出ましたが、娘はここでも賢い方向転換をしました。直線ルートのそばに、ま行のひらがなが3つもそろっていることに気がついて、ママが『やゆよ』を確保している間に『む』と『み』を持ってきて、見事『むもまめみ』でゴールしたのです。快心の勝利。よくできました。
何十枚もの札の中から特定の1枚を見つけ出すというカルタ遊びは、それだけで立派な知育だと思いますが、このゲームはそれを一手ごとにおこなう上に、言われた札を見つけるのではなく自分で札を決める計画性、相手の意図を推し量る洞察力、変化する状況にあわせて計画を変更するフレキシビリティを養う、一段高度な知育ゲームになっています。五十音表がほぼすべて5文字ずつの行で構成されていて、唯一『やゆよ』と『わ』が例外という、ひらがなの奇妙な配列がまた絶妙で、随所でうまく『やゆよ』と『わ』を使うことで、ルートにさまざまなパターンが生まれます。とにかく面白い上に、専用ボード等なにも必要なく、お手持ちのカルタひとつでできますので、是非やってみてください。
カルタ遊びの可能性は無限大
ひらがな一文字につき、読み句がひとつ、絵がひとつ。考えてみればカルタというのは、日本固有の素敵な文化ですね。こんなに一枚一枚ユニークで趣向を凝らした札を使うカードゲームは、他にないのではないでしょうか。ですが遊び方がひと通りでは、たしかに飽きてしまいます。引き出しにしまいっぱなしになっているカルタ、新しい遊び方をしてもっともっと楽しみましょう。
うちは上の子が8歳、下の子が2歳。上の子は普通に遊ぶのに飽きてしまうし、下の子は普通に遊ぶのもおぼつかない、そんな二人がいっしょに遊ぶのはますますもって難しい。そのような状況下で生まれたのが、上でご紹介した遊び方です。もっと思いついたらまたご紹介します。他にも遊び方があったら、是非教えてください。